食いしばりと脳脊髄液の関係

目次

睡眠中、脳脊髄液が脳をキレイに

脳脊髄液が脳の老廃物を洗い流す

私たちの全身の細胞は、日々新陳代謝を繰り返しています。

新陳代謝とは、身体の中で起きている、生きるうえでとっても大切なプロセスです。
これは、私たちの身体がエネルギーを作り出し、成長したり、修復したりするために行っている活動です。

それは脳も同じこと。新陳代謝をして、老廃物を脳の外へ排出しています。
その老廃物を回収しているのが、脳脊髄液です。

寝ている時間は脳のお掃除タイム

一日のうちで、いちばん脳脊髄液がはたらく時間帯があります。
それは、いつだと思いますか?ズバリ、夜寝ているときです。

脳脊髄液を脳に大量に送ることは、実はとてもエネルギーが必要なことなんです。
ですから、脳がゆっくり休んでいる睡眠中にしか、このシステムがスムーズにに機能しないのです。

つまり寝ている時間は「脳のお掃除タイム」。
ということは、やはり睡眠不足は良くないということですね。

脳の老廃物を回収した脳脊髄液は、主に静脈に入って心臓に戻っていきます。
その際、脳の老廃物を排出するメインの血管が「内頸静脈」です。
これが脳の老廃物を排出するメカニズムになります。

脳脊髄液の圧迫で、認知症に?

脳脊髄液の圧迫

首の内側にある「内頸静脈」。とても太く、多くの血液が流れるところです。
生きていくうえで、重要な血管です。

ここが筋肉のコリによって圧迫されてしまうと、脳へ流れる血液の量が不足しがちになってしまいます。
すると、大変なことが起こります。

脳の中で脳脊髄液の循環が悪くなり、いつまでも老廃物がとどまり続ける状態になります。
その結果、脳の細胞にダメージを与えることになります。

これだけにとどまらず、さらにさらに悪いことは続きます。
脳脊髄液は、脳の中の「脳室」という場所でつくられます。
脳脊髄液が循環せずにたまっていると、この「脳室」そのものが脳脊髄液で圧迫され、内圧が上がり少しずつ膨らんでいきます。

海馬の機能が下がる

すると、脳室のすぐ隣に「海馬」という場所があるのですが、ここにまで影響がおよんでしまいます。
そうなると、この「海馬」が萎縮し、機能低下が起こると考えられています。

「海馬」は短期記憶を司るところです。ここに萎縮や冷えが始まると、「今さっき」の記憶が思い出せなくなります。
「さっきお昼ご飯食べたかしら?」「さっき見たTVは何だっけ?」。

これこそが、アルツハイマー型認知症の初期症状になります。
そして「海馬」が萎縮すると、やがて脳全体も萎縮していきます。
本格的な認知症に向かってまっしぐらです。

では、なぜ脳脊髄液の循環が悪くなってしまうのでしょうか?その犯人は、ズバリ「首」。
首の筋肉のコリや頸椎のゆがみで、「内頸静脈」の流れがブロックされることが原因なのです。

 

首コリの主犯格は、胸鎖乳突筋

首は「頸椎」という7つの骨が積み重なってできています。
その中には「脊髄神経」という、とても重要な神経が通っています。

それだけでなく、脳に血液を送る動脈や、脳から心臓に血液を戻す静脈、リンパ管など、さまざまな管が通っています。

人間の頭は、成人で約5kg以上あるといわれています。
首は重い頭を支えている場所でもあるので、ただでさえコリやすいところです。

現代人は長時間のデスクワークやスマホをのぞき込む姿勢など、首に負担をかけやすい環境で生きています。
これでは、脳を支える
首や肩は悲鳴を上げてしまいます。

首のコリが慢性化すると、次第に頸椎がゆがんでしまいます。
すると脳脊髄液の流れが悪くなり、脳の老廃物の排出がうまくできなくなるのです。
このことを医者のあいだでは『頸椎のブロック』と呼んでいます。

この首のコリ、主役となる1つの筋肉があります。その名は「胸鎖乳突筋」。
この筋肉が固くなること、イコール、首のコリと言っても過言ではありません。

この「胸鎖乳突筋」は、耳の後ろから鎖骨につながる太い筋肉。
この筋肉が固くなると、脳脊髄液が合流する「内頸静脈」を圧迫してしまいます。

首コリは、メンタルにも悪影響

首のコリの慢性化でおこる『頸椎のブロック』。この状態は、メンタル面にも悪影響をおよぼしていると考えられています。

脳の血流の障害によって、脳が酸欠状態におちいり、疲れる、だるいといった症状がでてきます。
やがて、「外に出たくない」、「何もやる気にならない」という、うつ状態になってしまう場合もありえます。

この場合、メンタルクリニックや精神内科へ行けば、抗うつ剤や睡眠導入剤を処方されるでしょう。

元気

これはあくまでも私の個人的な意見になりますが、単に薬だけに頼るというのは、あまり推奨できません。
長年の施術経験で私が感じることは、「とりあえず飲んでおけばOK」と、根本の原因を探ろうとせず、付け焼き刃的な発想で、薬を飲み続けている方があまりにも多いということです。

「薬は悪、絶対飲むな」と、極端なことを言いたいわけではありません。
ガマンすることで、さらに不安になってしまっては元も子もない話です。

ただ、薬を飲みながら首のコリを治すことで、うつ病などの疾患が緩和していく可能性も大いにあるということです。
実際、当院でも、そのようなケースが数多くあります。

睡眠中の食いしばりに、要注意

頚椎のゆがみを招くもう1つの原因が、「夜の噛み合わせ」です。
目が覚めているときの「昼の噛み合わせ」に対して、「夜の噛み合わせ」とは睡眠中の噛み合わせのことをいっています。

実は、脳脊髄液にとって大きな影響を与えているのは、「夜の噛み合わせ」の方なのです。
その理由は、寝ているときの“歯ぎしり”と関係があります。

“歯ぎしり”というと、「キシキシ」「カチカチ」と音を立てているイメージがあります。
しかし実際に多いのは、音を立てない食いしばりです。

「自分は歯ぎしりなんてしないよ~」と思うかもしれませんが、食いしばっていても周りの人は気がつきませんし、自覚症状もありません。
しかし、ほとんどの人が食いしばりをしているといわれています。

食いしばりの悪循環

睡眠中の食いしばりは、普段、食事のときに噛む力の何倍もの強さです。
また、個人差はありますが、食いしばり続ける時間も長いのです。

その結果、睡眠時の姿勢が悪くなり、頸椎の1番、2番にゆがみが生まれます。
それはつまり、頭が反り返って寝ることにつながるのです。
この姿勢だと首がこり、内頸静脈の流れが悪くなります。

その結果、脳脊髄液の循環も悪くなって、脳の老廃物の排出がとどこおってしまうと考えられます。
これを何年も続けていると、頸椎そのものがゆがんでいき、ますます脳脊髄液の流れが悪くなるのです。

人はなぜ、睡眠中に食いしばる?

食いしばりとポンプ作用

それにしても、人はなぜ食いしばるのでしょうか?その原因は諸説あります。
その中でも、近年歯科医の中で、有力だとされている考え方があります。
それは、「心臓のポンプ作用のはたらきを助けるために、食いしばるのではないか?」という説です。

睡眠中の心臓は、血液を押し出すポンプ作用が弱くなっています。
そのとき、首にコリがあると、脳に血液を送りづらくなり、脳が酸欠になりやすくなります。
それでは非常にまずいのです。

それを防ぐために、歯をグッと食いしばることで顎の筋肉を固め、そして今度は、歯の力を少し抜くことで顎の筋肉をゆるめる・・・。

それを交互におこなうことによって、顎でポンプの役割を担っているのです。
そのはたらきによって、血液を上へ上へ、すなわち脳の方へ押し上げているのです。

これは、ふくらはぎと同じメカニズムです。
ふくらはぎは「第二の心臓」といわれているのは、ご存じの方も多いでしょう。
ふくらはぎの筋肉が伸び縮みしながら、足の血液を上へ上へ押し上げます。
筋肉には多くの血管があり、歩いたり走るなどして筋肉を動かせば、自動的に血流が良くなります。

ということは、決して食いしばることが、絶対悪ではないということになります。
必要だからこそ、睡眠中にも食いしばりがおこなわれているわけです。
だけどそれが過剰になりすぎると、前述したように、脳脊髄液が滞って身体に害をおよぼすようになります。

それでは何が正解なのでしょうか?
それは、睡眠中に、できるだけ首に余計な緊張がない状態でいることです。

そのためには、寝ているときだけでなく、普段からの首の状態が大切になります。
日常生活から首がリラックスして力が抜けていれば、おのずと血流は良くなります。
すると、睡眠時の食いしばりも必要最低限で済むはずです。

 

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