にった指圧院
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横隔膜呼吸法のキセキ【後編】

目次

あなどれない、隠れ酸欠の実態

隠れ酸欠

2020年、 新型コロナウイルスが世界中に広まりました。 世の中がガラッと変わり、 私たちの生活に大きな影響を与えましたね。
現在は状況が落ち着いてきましたが、 その当時の習慣が残り、多くの人々がマスクを手放せなくなっています。

そんな中、 マスクの着用が続き、 一部の人が隠れた健康の問題に直面しています。
マスクは必要な予防手段ではあります。 ただし長時間の着用が原因で、 とある問題を引き起こす可能性があるのです。

呼吸が深くなる

その健康の問題というが、“隠れ酸欠”。最近、TVや週刊誌で取り上げられることが増えてきました。ご存じの方も多いでしょう。
“隠れ酸欠”とは、全身が軽い酸素不足におちいってしまう状態のことです。

ストレスを感じると、私たちは身を守ろうと無意識に背中を丸めることが多くなります。
また、自律神経のうちの「交感神経」が優位に働きます。交感神経が優位になると呼吸が浅くなるので、酸素を十分にとりこめなくなるのです。

この“隠れ酸欠”を解消するカギも、やはり、さんざんお伝えしている、横隔膜をやわらかくほぐすことです。
横隔膜、大活躍です。本当にすごいですね。

「気持ちよく」さすることの効果

気持ちよくさする

この呼吸法の効果を何倍にも増大する方法をお話しします。
それは、「さする」ことです。呼吸法をする前に、胸、脇、腹のあたりを、ダラダラとさすっていきます。
このとき、もし余裕があれば、「気持ちよく、気持ちよく」とつぶやきながら、さすりましょう。「気持ちよく」とつぶやきながらやると、効果が2~5倍になります。

だから、「つぶやくのが面倒で嫌だな」と思っても、合理的にメリットとデメリットを考えると、自分にだけでも聞こえるようにつぶやいた方が、絶対にお得です。
だんだん慣れてきて、上達してくると、「気持ちよく、気持ちよく」とつぶやくこと自体が呼吸法のトレーニングとして役立ってきます。
つまり、さする動作とリズムを持って、呼吸がシンクロしてくるわけです。

また「気持ちよく」というフレーズは、脳や身体に対する大変優れた操作言語であることも、わかっています。
「気持ちよく」なっていくときに、人の体に何が起きているかというと、まず脳の自律神経のスイッチが、交感神経優位から、副交感神経優位に変わっていきます。

脳幹の仕事を助けてあげよう

脳幹が疲れる

疲労状態というのは、典型的に交感神経が優位な状態です。
疲労に対して身体は、ホメオスタシス(恒常性)といって、通常の状態になんとか戻そうと、努力しはじめます。

そのことは脳、とくに脳幹にとって非常に負荷のかかることになります。
脳幹は、私たちの脳の一部で、頭の一番下に位置しています。これは、身体の基本的な機能をコントロールする非常に重要な部分です。

疲労状態が辛いのは、疲労自体がすでに辛いのに加え、疲労を回復させようとして脳幹がハードに働かなければならなくなるから。
つまり脳幹が働くことで、辛さが倍加するわけです。

気持ちよくさする

こうした疲労状態は、交感神経が働きっぱなしになっていることが、実は最大の元凶です。
それだけに、交感神経を巧みに副交感神経優位にできると、その分脳幹の仕事量を減らすことができます。

皆さんも、「ものすごく疲れたとき、何もしないより、好きな映画や音楽を聴いたり、ちょっと何かをした方がいい」といった話を聞いたことがあるでしょう。

その刺激が強過ぎて、また交感神経が優位になってしまっては元も子もないのですが、音楽を聴いたりすることでリラックスできれば、副交感神経優位になりやすいので、何もしないより疲労回復効果が高まるのです。

先ほどお伝えした「気持ちよく」という言葉は、間違いなくその効果があります。
それを「さすり」と一緒にやると凄まじいほどの効果がえられます。

横隔膜が、内臓をマッサージする

体幹がゆるむ

横隔膜が上下に動いたときに、その影響で体幹の圧力が変わります。
圧力がかかった方は膨らみ、圧力が減った方は凹む。つまり伸びたり縮んだりして、ポンプのように作用します。
この横隔膜の運動によって、内側から体幹のインナーマッスルからアウターマッスルに向けて、力みが抜けてゆるんでいきます。

このおかげで、普段から正しい姿勢を維持しやすくなります。正しい姿勢は体幹をサポートし、血液の循環が促進されます。
その結果、不必要なストレスや疲労が軽くなっていきます。

横隔膜が、内臓をマッサージしてくれる

一方、横隔膜の運動は、もっと大きな意味のある働きもします。
それは内臓の動きです。例えば胃や小腸や大腸。これらの内臓は非常に疲れが溜まりやすい部分です。

これらの内臓も筋肉でできています。
筋肉は疲労が溜まると、衰えて薄くなり、固くなります。その結果、消化吸収能力がどんどん下がっていきます。

だからこそ、疲れたときや年をとってくると、ちょっと食べ過ぎたりするとたちまちゲンナリして、翌朝まで胃のもたれが続き、吐き気などが起こるわけです。
これらの不快感も、実は内臓の筋肉の衰えからくるもの。
それを体の中からマッサージをして解消してくれるのが、横隔膜の役割です。

腰痛対策も、横隔膜

横隔膜はドーム状に存在している

この横隔膜、脱力した状態では、胸の方にドーム状に上がっていきます。
脱力すると横隔膜の筋肉は伸びるわけですが、伸びた横隔膜は、お腹の方にダラ~ンと下がるのではなく、胸の方に上がるのです。
胸の方に上がる理由は、横隔膜より下に内臓が沢山あるからです。
胸の中には肺と心臓しかありません。その肺も、空気しか入っていないようなものです。だから重さも軽く、容積も小さい。

一方、お腹の内臓は、ひとつひとつの臓器に重みがあり、詰まっています。
それらの臓器を押し広げるほどの重みは横隔膜にはないので、脱力すると胸側に上がってしまうのです。
このような体の設計は、とても合理的なデザインです。
横隔膜の筋肉が縮むと、下に向かって非常に強い圧をかけることになるからです。

パスカルの原理

「パスカルの原理」をご存じですか?
「静止しているものに加わる圧力はどこでも等しくなる」というものです。
この原理にしたがって、横隔膜によって上から下に加えられた圧力は、四方八方へ広がっていきます。
腹部はグッと腹が突き出ることで、その影響がわかりやすいのですが、実は腰にも圧力が加わっているのです。

つまり、この圧力、腰の固まった筋肉をもほぐす働きがあるのです。しかも体の内側から。
他人が腰をゆるめようとしたら、どうしたって体の外側からほぐすしかありません。
腰のコリに対し、内側からアプローチすることができる、唯一の存在、それが横隔膜です。

やってみよう、横隔膜呼吸法

横隔膜ストレッチ①

【残気10】
鼻からゆっくり息を吸い込み、ゆったりと吐く。
これを数回繰り返す。次に、十分に息をゆっくり吸い込み、息を止める。
この状態を「残気10」とする。

【残気3】
口からゆっくり息を吐き出す。
だいたい7割吐き出したところで、息を止める。

横隔膜ストレッチ③

【残気3】
3割の息を、胸・脇・背中に引き上げる
(息を止めたまま)。

横隔膜ストレッチ④

【残気3】
3割の息を、腹・腰に下ろす。
(息を止めたまま)。

※②~④を三回くり返す

【残気0】
3割の息を吐き、呼吸を整える。

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